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鶴田至弘議員の質問
【1】地方分権の問題 機関委任事務廃止の中途半端さについて 
鶴田 分権の最大の眼目は、国と地方の関係を上下から対等の関係にする、そのため機関委任事務の廃止ということだった。ところが機関委任事務の四○%が法定受託事務として残された。基本的な廃止とは到底言いがたい。この中途半端さについて副知事はどう受けとめるか。
■高瀬副知事
 地方分権一括法案は、地方分権推進のための画期的な第一歩と受けとめている。
 法定受託事務については地方分権推進委員会において法定受託事務となるべき基準を定め、地方分権推進の観点から個々の事務ごとにその性質、内容を十分検討の上、事務の区分が行われたものと伺っている。法案における事務区分は、地方分権推進委員会の勧告を最大限に尊重して策定された地方分権推進計画に則したものと承知しており、分権の流れに沿ったものと受けとめるべきものと考えている。

鶴田 国の地方に対する関与について 国の関与の排除であるが、法定受託事務に大きく関与の道を残しているだけでなく、自治事務にまで国の関与の道を大きく開いた。自治体が行う自治事務が国の意にそぐわないときは担当大臣が是正の要求ができる、要求を受けた自治体は必要な措置を講じなければならないとしている。個別法による国の代執行さえ認めている。
 この国の地方への関与は、明らかに自治の侵害である。分権に逆行するものだ。どう考えるか。
 さらに、通達行政の問題がある。地方分権の推進のためには通達行政を排除することが大きな要件になるが、ほとんど手がつけられないままになっている。この点をどう考えるか。
■稲山総務部長
 是正要求についての是正改善義務の規定について地方公共団体の違法な事務処理等が自主的に是正されず、行財政の運営が混乱し、著しい支障が生じているような場合に設けられたものと承知している。
 地方公共団体において是正措置の要求に不服があるときは係争処理の対象とされているところもあって、国と地方公共団体の関係の公正、透明性等の確保が図られているものと考えている。
 代執行については法定受託事務に限って認められているところであって、本来国が直接執行すべき性格のものという観点から地方自治法に規定がなされた。
 通達行政について、機関委任事務制度の廃止によって国による包括的な指揮監督権が廃止され、国の関与の基本類型及び手続きが限定的に定められたので、従来のような広範な通達による国の関与といったものはなくなるものと理解している。

鶴田
 財源は地方へ移譲されたか。
 法案には地方への財源移譲はほとんど明記されていない。分権は財源を伴わない限り形だけのものになり、仕事と責任を押しつけられただけ。財源保障の明記を欠いた分権法案を副知事はどう考えるか。
■高瀬副知事
 今回の法案は、税財政面における抜本的な措置が盛り込まれていないことはまことに残念である。政府予算要望において国と地方の税配分の抜本的な見直しによる地方財源の充実等について要望したところである。今後とも強く働きかけをしていく。

鶴田 市町村合併について
 今回の分権法案は、市町村合併の促進を誘導するような諸条項が盛られている。財政的に非効率だということで住民の意思に反して合併が促進されるとすれば、分権の思想に反する。副知事の所見はどうか。
■高瀬副知事
 市町村合併については、市町村、住民の自主的な取り組みが基本であると考えており、県としては、将来の市町村のあり方についての議論を深めて頂くため、必要な情報の提供に努めて参りたい。

【2】国歌・国旗、日の丸・君が代について
鶴田 国旗・国歌の法制化には、国民的議論が必要
 日本共産党は、国旗・国歌の法制化については自由闊達な国民的議論が必要だ考えている。その中で国民的合意をえる工夫がなされるべきだ。一気呵成に法案成立とすべきでない。教育長はどのように考えているか。
■小関教育長
 教育委員会としては国権の最高機関である国会での審議とその方向を見守って参りたい。

鶴田 日の丸、君が代は国旗、国歌にふさわしいか
 政府の提案は、国旗は日の丸、国歌は君が代、とするというものだ。戦前の暗い時代を想起させ、主権在民の思想と相容れないと思われる日の丸、君が代をどのように評価しているか。
■小関教育長
 日の丸、君が代が戦前の一時期不幸な扱いをなされたこともあったが、戦後の日本国憲法において、天皇を主権の存する日本国民の総意に基づき日本国及び日本国民統合の象徴と位置づけている。日の丸、君が代は憲法で定める主権在民の理念に反するものでないと認識している。

鶴田 国旗・国歌と思想信条の自由について
 国旗・国歌に対する態度は個人の思想信条にかかわる問題だ。個人の良心に属する問題である。思想信条にかかわるような問題を法的拘束力をもつとした学習指導要領において義務づけること自体が問題ではないか。教育長の所信を聴く。
■小関教育長
 公教育の場で国旗・国歌についての指導を行うのは当然のこと。今後とも、入学式・卒業式をはじめ、日頃の学習活動においても国旗・国歌に係る指導を徹底し、理解を深めるとともに指導の内容、方法についても、一層充実するよう引き続き努力していく考えである。

【3】雑賀崎埋め立て問題について
鶴田 大規模な埋め立てとマイナス十四メートルバースの必要性、果たしてそのような計画が必要か。
 八五年当時、県は十年後の公共貨物の扱い量を六百万トンと見込んでいたが、実際は半分にも満たない二百七十一万トンだった。今回の改定に当っての見通しは十年後五百万トンであるが、今回は正しいという根拠はない。この素朴でかつ重要な問いに納得できる答弁を求める。
■大山土木部長
 将来の貨物量は、五百万トンを計画目標にしており、特にアジアなど諸外国との直接交易の拡大を見込んでおり、外貿貨物の増加量を百四十万トンと計画している。このうち約八十万トンが外貨コンテナ貨物、約三十万トンが林産品、残り約三十万トンが建設資材となっている。
 見込みには根拠があり、水深十四メートル岸壁については、今後の船舶の大型化を考えると是非とも必要な計画である。外材輸入関係業者からも、効率的な輸入計画や大量一括取扱による北米材単価の低減のためには、満載状態で入港できる大水深岸壁が必要との要望を受けている。

鶴田 事業計画を明らかにせよ
 財政が厳しいとき、むだな公共事業はやめておこうという声が当然起こる。新たな事業を始めるとき、事業に要する費用、事業主体、さらに費用対効果についても同時並行的に考えていこうではないかということになってきている。県民の判断に資するためにも事業計画を明らかにすべきだ。
■大山土木部長
 事業主体については、まだ決まっておらず、事業費については数百億円と見込んでいる。事業着手の際には、既存岸壁の利用状況、貨物の需要動向を踏まえ、費用対効果などを確認した上で、事業実施したい。

鶴田 景観問題はクリアしたのか。
 景観検討委員会の結論もさりながら、副知事自身、この巨大な埋め立てにもかかわらず雑賀崎の景観美を保持しえたと思っているか。
■高瀬副知事
 昨年五月に和歌山下津港本港沖地区景観検討委員会を設置し、一年をかけた景観面の検討が五月十五日に終了し、景観上容認できるとの結論を得たところである。変更案は背後地の工業地帯を緑地でカバーするとともに、雑賀崎の景観の特徴である多島海景観と紀淡海峡から太平洋にかけての眺望も十分保全していると考えている。

鶴田 なぜ急ぐのか。
 さきの港湾建設で設定された港湾需要が五十%しか満たされていない、十三メートルバースも完成していない。そのような段階で新しい港湾計画を今年七月の国の港湾審議会までにと、地元の合意も差しおいてがむしゃらに強行するのはなぜか。
■大山土木部長
 この港湾整備による輸送費の削減による消費者物価の低減や輸出入に関係する産業の振興、雇用の確保、さらに下水道などの基盤整備から発生する建設残土受け入れ空間の確保といったことを考えると早期に計画変更していく必要があると考える。

再質問
【分権問題】
鶴田 自治事務について今までなかった是正の要求、是正の義務について適正な措置だという評価だが、心外であり、もっと真剣に考えるべき問題である。地方が勝手なことをしては困るからということだけで、そういう条項が設けられるというのは、明らかに分権の思想にも反する。総務部長の所見を聴く。
 通達行政について大きくかわっていくというが、大変甘い見通しだ。通達行政はなくしていくことが厳しく求められるが、総務部長の所信を聴く。
■稲山総務部長
 地方分権に関して、自治事務に対する是正要求の規定は、従来より存在しており、これに従うべき義務規定が今回設けられた。改善の具体的な内容については地方公共団体の裁量に委ねるなど必要最小限のものとすることや、係争処理手続きの対象としていることからも、分権に反するという指摘は当らない。
 通達行政がなくならないのではという指摘だが、従来のような上級官庁から下級官庁を指揮監督するという、いわゆる通達行政はなくなるものと理解している。

【港湾整備の大バースの建設根拠】
鶴田 従来の答弁とほとんど変わらない。根拠が、ヒアリングであったりアンケートであったりするが、根拠薄弱ではないか。十三メートルバースができて利用状況など総括して新たな計画に入っていくのが当然のことではないか。
■大山土木部長
 今回の港湾計画は、十数年後の物流需要の増大や船舶の大型化などに対応するためであり、林産品や化学製品などの貨物を扱う計画となっている。

【日の丸、君が代について】
鶴田 君が代は、天皇の代が千代に八千代にという歌詞は、明らかに主権在民の世という文言とは合致しない。どう考えるか。
■小関教育長
 主権在民の原則と矛盾するものではない。

鶴田 思想信条の自由と国旗・国歌の問題で、学校教育の行事や儀式で国旗・国歌を義務づけている。義務づけていること自体が問題、その前近代性が問題だ。どうか。
■小関教育長
 一市民として、自立した個人として思想信条を持ち、その自由は基本的人権として今の憲法で認められている。教育公務員として教職員には法令遵守の義務がある。個人の思想信条の問題とは自ずと別であるという考え方で学校に対しては指導している。

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